2024.05.13 コラム
資産運用とは?手持ち資産を効率的に増やしていく流れ
老後2,000万円問題などもあり、現在の資産をより増やすため、資産運用を検討している人も増えてきています。
しかし資産運用とはどのように進めるのか、初心者に向いているものは何かなど、わからない人も多いでしょう。
今回は、資産運用とはどのようなものか、資産運用の方法についてなどをご紹介します。
この記事でわかること
- 資産運用には保険や株式投資など豊富な種類がある
- 初心者に向いているのはNISAやiDeCo
- 資産運用をする際は長期かつ分散投資が大切
資産運用に興味がある、取り組んでみたい人は、ぜひ最後までお読みください。
記事監修者
氏名 | 奥山利幸 |
大学 | 法政大学 |
学部 / 学科 | 経済学部/国際経済学科 |
役職 | 教授(2017年度より副学長・常務理事) |
略歴 | 法政大学経済学部卒,University of Washington, Ph.D.,弘前大学助教授,法政大学経済学部助教授を経て現在に至る。法政大学大学院研究科長,経済学部長を歴任,現在は副学長・常務理事(2025年3月まで)。 |
資産運用とは自身の持っている資産を効率的に増やす方法
資産運用とは、自身の持っているお金を預貯金や投資に運用して、効率的に増やしていく方法を指します。
資産運用といっても種類はさまざまであり、確実に少しずつ増やす方法や大きく利益を増やす方法もあります。
人生の中では老後の生活や相続について、子孫の結婚や教育などお金が必要となる場面は多いです。
いざお金が必要となったときに、問題なく生活を送るための手段の1つに資産運用があります。
中には、将来の資産については、貯蓄で十分と考えている人もいるでしょう。
貯蓄はすぐに使える流動性の高いお金であり、中長期的な目線でお金を増やす投資とは目的や使い方が変わります。
自身の目的に応じてさまざまな運用が行えるため、どのような方法が合っているか学び、実践しましょう。
資産運用の種類は豊富にある
資産運用はさまざまな種類があり、目的に応じて最適な運用方法の組み合わせができます。
どのような種類があるのか、詳細についてご紹介します。
自身がすぐに始められるものはあるか、興味のある運用はあるか、ご確認ください。
債券投資
債券とは企業や地方自治体、国などが資金を集めるために発行する有価証券を指します。
投資家は発行体に対してお金を貸す代わりに利子を受け取り、発行体は満期となる償還日に借り入れた金額を投資家に払い戻す仕組みです。
株式や投資信託よりも、収益性が安定している点が特徴となります。
ただし、株式投資のような利益が得られるとは限りません。
債券は安定した投資が特徴の1つですが、気を付けたい点があります。
- 発行体が倒産した場合などは、利払いや償還金の遅延が発生する可能性がある
- 途中売却した場合は投資額を下回る可能性がある
より安定した収益を望む場合は、より信頼できる組織が発行している債券を選びましょう。
保険
保険の中でも特に生命保険は、資産運用に該当する商品です。
万が一に備えながら、貯蓄性もあるため、自身の資産を守るために加入している人も多いでしょう。
生命保険の貯蓄機能には、解約返戻金と満期金の2つが該当します。
解約返戻金は途中解約時に受け取れるお金、満期金は保険が満期の際に受け取れるお金です。
ただし、必ず支払い保険料より多くの金額を受け取れるとは限りません。
生命保険は元本割れするリスクはありますが、毎年生命保険料控除を受けられるといった利点もあるため、税制優遇を望む場合は考慮しましょう。
そのほか、終身保険や養老保険、学資保険も資産運用の機能を持っています。
もしものときに備えながら、資産もある程度確保したいといった人は、保険による資産運用を検討しましょう。
外貨預金
円ではなく、ドルやユーロなどの外国通貨による預金が可能です。
円安の場面ではリターンを得られるほか、金利は円預金よりも高く設定されています。
一般的にはミドルリスクとミドルリターンとされていますが、通貨によってはハイリスクとなるでしょう。
外貨預金では円を外貨に変えて預け、使用する際には日本円に戻します。
その都度為替手数料が発生するため、満額を交換できるとは限りません。
ほかには為替レートの状況によっては大きく儲かる場合もあれば、損をする可能性もあるため、常に変動するレートに気を配っておく必要があるでしょう。
円預金
銀行や信用金庫など、金融機関へお金を預ける方法が円預金です。
お金を預けると利子が付くため、長期的な運用によって少しずつ資産は増えていきます。
円預金にはいつでも引き出しができる普通預金や、一定期間預金の引き出しができないが利子が高くなる、定期預金など複数の種類があります。
目的に応じて使い分けができるため、急にお金が必要となったときでも普通預金なら、対応できるでしょう。
万が一銀行が倒産などをした場合でも、1金融機関ごとに預金者1人あたり、元本1,000万円と利息までは保護の対象です。
しかし、利子は基本的に高くないため、増える額はそう多くありません。
より多くの額を効率よく増やしていきたい場合は、他の方法との組み合わせを検討しましょう。
不動産投資
不動産投資は土地や建物を購入し、他人に貸した際の家賃収入などで得る方法を指します。
建物を利用する場合、入居者がいる限りは収入を安定させやすい点が特徴の1つです。
所有している不動産が購入時よりも値が高いときに売ると、利益も得られるでしょう。
ただし入居者が安定せず空室ができてしまったり、不動産自体の価格が下がってしまったりすると、収入を計画通りには得られません。
地震や火災などのリスクもあるため、万全とはいえない点もあります。
土地を利用して運用する場合は、駐車場やコインランドリーの運営などの方法があります。
土地や建物を所有している場合や、土地を入手できる人は、ぜひ不動産投資もご検討ください。
初心者に向いている資産運用4種
資産運用には、さまざまな種類があるとご紹介しました。
そのため、初心者向けのものもあれば、経験者向きのものも混在しています。
投資初心者が取り組みやすい資産運用について、今回は4種類をご紹介します。
興味がある物や取り組みやすいものはないか、ぜひご確認ください。
NISA
NISAとは金融庁が主導している商品であり、2014年からスタートしている制度です。
2023年12月には旧制度が終了し、2024年1月からは新NISAが始まっています。
新NISAにはつみたて投資枠と成長投資枠の2つがあり、両方の枠を併用した投資が可能です。
非課税保有期間が無制限となった点や、年間投資上限額が以前よりも増額した点など、より利便性が上がっています。
少額から投資ができるため、証券会社によっては月100円からの投資ができます。
気軽に投資を始めてみたいといった人には、最適な金融商品の1つといえるでしょう。
新NISAの概要は、以下の通りです。
新NISA成長投資枠 | 新NISAつみたて投資枠 | |
---|---|---|
年間投資上限額 | 240万円 | 120万円 |
生涯非課税限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠1,200万円) | 1,800万円 |
制度併用 | 可能 | 可能 |
非課税保有期間 | 無制限 | 無制限 |
対象年齢 | 18歳以上の成人 | 18歳以上の成人 |
買付方法 | スポット・積立 | 積立 |
対象商品 | 株式・投資信託・ETF | 投資信託 |
制度の併用もできるため、日々の生活に応じて投資を行える点が、初心者に向いている資産運用の1つとなっています。
iDeCo
iDeCoは個人型確定拠出年金といい、老後のための資産を自分で作る私的年金制度です。
一定の範囲内で自分で掛金を決めて、投資信託や保険などの、自分で選んだ商品を運用できます。
掛金の上限は職業によって異なるため、事前に自身の職業ではいくらまで掛けられるか確認しましょう。
ほかの商品と異なる点として、積み立てた金額は原則60歳になるまで引き出しはできません。
つまり、老後の資産を確実に用意したい人には最適な商品です。
受け取る際は一時金と年金、2つを併用させる方法がありますが、どの方法でも税金の優遇が適用されます。
iDeCoは掛金が所得控除の対象となるため、節税効果がある点は魅力的です。
将来に備えておくだけではなく、節税対策も検討している人はぜひiDeCoを活用しましょう。
投資信託
投資信託は多数の投資家から集めた資金をまとめ、複数の銘柄で運用される商品です。
運用の専門家が株式や債券などを投資し、成果がそれぞれの投資額に応じて分配されます。
分散投資を行っているため、1つ投資信託を購入するだけでリスクの低い資産運用につながります。
少額で購入ができるため、自身の生活状況に応じた投資ができるのも魅力的です。
専門家に運用を任せられますが、その分投資に関する知識やスキルは身につけられません。
より効果的な資産運用や投資信託を選ぶには、自分で積極的に学ぶ必要があります。
投資信託では、売買や保有時に手数料が発生します。
投資信託によって手数料は異なるため、事前にいくら手数料が発生するか確認しましょう。
株式投資
株式投資は、株式会社が発行した株式を証券取引所で売買する方法です。
値上がり益のほか、配当金や株主優待を受けられる場合もあり、保有するだけでも利益のある商品となります。
株式は企業の業績や株式市場の状況、景気動向など、さまざまな要素で日々変動します。
ときには一気に値下りする場合もあるため、日々値動きを確認する必要があるでしょう。
購入は企業によって1株数百円から購入できる場合もあるため、小さな額で始められる点は初心者にとって魅力的です。
株の売却による利益以外にも、保有しているからこそ得られる利益もあるため、ぜひ気になる会社の株式は購入を検討しましょう。
資産運用のために知っておきたい内容
資産運用を始める際はもちろん、運用を進めていく際に知っておきたい内容があります。
資産運用を成功させるためにも都度確認し、問題がないか把握しましょう。
今回は特に知っておきたい内容を、5つご紹介します。
長期分散積立を意識する
資産運用の原則は長期で、分散させて、積立を意識した運用です。
投資を行っていると、一時的に元本割れとなる場合があります。
利益が減っているからと焦って売却をせず、長期的に投資を進めると結果として損失を抑えられるでしょう。
さらに、積立投資は資産や時間を分散させて、長期投資を実現させる方法です。
積立投資には毎月一定の金額を長期間、コツコツと購入するドルコスト平均法などの方法があります。
分散投資は複数の金融商品へ投資をすると、特定の金融商品で損失が発生しても、他の商品で損失を補填できます。
結果として損失とならないため、資産運用によるリスクを抑えられるでしょう。
金融商品同士の相性も考慮し、損失が大きくならないような資産運用をご検討ください。
少額から始める
資産運用を始めようと考えている人の中には、手持ちの資金をすべて運用に活用しようと検討している人もいるでしょう。
しかし、初めて資産運用をする場合は特に、少額からの投資を始める必要があります。
もし投資を始めた後に重大な下落が起きた場合、元の金額に戻すのには相当な時間と労力が必要になるためです。
元本割れをした場合に、必ず回復する補償はありません。
少しでも損失を抑えるためには少額から始めて、知識を身につけた後に運用する額を増やしましょう。
少額であれば気軽に資産運用を始められるほか、さまざまな実践経験も積めます。
資産運用を始める際は、少額から少しずつ投資する額を増やし、資産を増やしましょう。
お金を3つに分けて運用する
資産運用を進める際に必要な考え方には、自身が持っているお金を3つに分けて、投資を行うものがあります。
資産運用をする際は、以下の3つにお金を分けておきましょう。
- 生活するためのお金
- 使い道が決まっているお金
- 当面使う予定のないお金
資産運用を行う際は、当面使う予定のないお金から利用しましょう。
投資は必ず利益が出るとは限らず、場合によっては多大な損害が出る可能性があります。
生活するお金までも投資に利用すると、今までと同様の生活が難しくなるなどの影響が出てしまうでしょう。
そのほか、使い道が決まっているお金は教育や住まいに関するお金を含みます。
資産運用でお金を増やすとしても、リスクの大きい方法では目的を達成できない可能性があります。
使い道の決まっているお金の場合は、貯蓄などの比較的安定した方法で管理しましょう。
資産運用の計画を立てる
資産運用をする際はなぜ資産運用が必要なのか、どうやって必要な額まで貯めていくのか、目的や計画を立てましょう。
老後資金を作る、住宅購入や教育資金のためなど、目標は人によってさまざまです。
いつまでにどの程度のお金が必要であるか洗い出し、達成のためにはどのような資産運用が最適かを考えましょう。
無理のある計画を立てても意味がないため、毎月どの程度なら生活に支障がないかなども含めて考える必要があります。
なお、計画や目標は、一度決めてそのままでは意味がありません。
随時、現在の生活や希望の金額に対して離れていないか、見直しをしましょう。
リスクやリターンを理解する
リスクとリターンは、基本的に比例関係にあります。
高額なリターンを求める場合は、その分リスクも大きくなります。
資産運用の場合は、株式やFXは高額なリターンを期待できる分、リスクも大きくなる傾向です。
反対に預貯金は、ローリスクローリターンの代表的な商品で、少ないリスクで運用ができます。
リスクが低いために多くの人が取り組んでいますが、高いリターンは期待できず、資産は横ばい状態がほとんどです。
なお、リスクにも種類があり、価格変動リスクや信用リスクのほか金利変動リスクがあります。
いずれのリスクも価格が下落する要因となり、場合によっては損失となるでしょう。
利益ばかりを見るのではなく、どのようなリスクが含まれているのか、しっかりと事前に学ぶ必要があります。
資産運用を始める際には商品特性などを理解し、自身が許容できるリスクかどうか、目的からもズレていないかを確認してから選びましょう。
資産運用を始める際は目的に応じて商品を決める
資産運用を始める際は、自身の目的に応じた商品を決めてから運用を開始しましょう。
教育や住宅資金を貯めるためなら、比較的短期間で資産を増やせる株などの商品が中心になります。
反対に老後資金など、必要となるときまで時間がある場合はNISAやiDeCoなどが向いているでしょう。
資産運用の種類が多い分、自身に合った商品や組み合わせが見つけられる可能性も高くなります。
目的といつまでにいくら必要か、目標を決めてからしっかりと見極めると、思っていたようにお金が貯まらないとはならないでしょう。
どうしても不安がある場合は、金融機関が主催する相談会などに参加し、プロの意見を取り入れるといった方法もあります。
資産運用に失敗する人の特徴3つ
資産運用に失敗する人には、いくつかの特徴があります。
資産運用を始めてみたが思ったようにお金が貯まらない、元本割れをして損をした、とならないよう気を付けるポイントをご紹介します。
始める前の人はもちろん、始めたばかりの人もぜひご確認ください。
目的が定まっていない
資産運用を失敗する人の多くは、目的が定まっていない場合がほとんどです。
資産を増やしたい理由や方法が曖昧だと、そのために選ぶ手段もバラバラになってしまいます。
場合によっては、目先の利益だけを優先した危険度の高い金融商品を選ぶ可能性もあるでしょう。
無闇に資産運用を始めるのではなく、資産に活用できるお金を明確にし、投資できる期間などもしっかりと見直しをする必要があります。
金融商品を選ぶ際は目的に合っているか、都度確認を行ってから購入しましょう。
情報に左右されている
さまざまな金融商品がある分、それらに付随する情報も多数あります。
インターネットで検索すると膨大な情報が見つかるため、どの情報を信じたら良いのか悩む人も多いでしょう。
しかし、情報を見つけるたびに全てを信じ実行していては、失敗する可能性は非常に高くなります。
資産運用で失敗しないためには、数多ある情報の中から正しい情報を見抜く知識が大切です。
正しい情報を取得するためには、資産運用に関する知識を常に勉強し続ける必要があります。
必要に応じて金融機関が主催するセミナーなど、プロから学べる機会を活かして正しい知識を身につけましょう。
一度正しい情報がわかると、都度その情報に左右されず、損する可能性を限りなく減らしていけます。
自分にあっていない運用を行っている
目的を定めていても、自分に合っていない運用を行っていると、失敗する可能性があります。
特に初心者の間は、自分に合った資産運用を選んでいないと、挫折する場合もあります。
初めからFXなどで利益を出そうとしても成功は難しく、利益が出ても長くは続かないでしょう。
最初はコツコツと長期間できるものなど、自身の経験や知識に応じた方法を選択する必要があります。
目的を明確にさせるのはもちろん、現状に応じた資産運用は何かを常に考えましょう。
資産運用を活用して将来の資産を効率的に増やしましょう
資産運用は、自身の持っているお金を預貯金や投資に運用して、効率的に増やしていく方法です。
今回資産運用ができるとご紹介した制度と金融商品は、以下の通りになります。
- NISA
- iDeCo
- 株式投資
- 投資信託
- 債券投資
- 保険
- 外貨預金
- 円預金
- 不動産投資
初心者が投資を始める際には、NISAやiDeCo、投資信託など長期的にコツコツと運用ができる商品を選びましょう。
いずれも少額から始められ、リスクを抑えた資産運用が行えます。
投資をする際には分散投資や、リスクやリターンの理解、目的を明確にさせての継続的な運用が大切です。
自身の目的に合った商品を選び、長期的な運用によって、効率的に将来の資産を増やしましょう。
奥山 利幸