2024.05.13 コラム
新NISAとは?新しいNISAの知っておきたい7つのこと
2024年からスタートした新NISAについて、聞いた覚えはあるという人も多くいるでしょう。
興味はあるがどうやって始めるかわからない、初心者でもできるのか不安な人に、新NISAに関する利点や気を付けるべき内容をご紹介します。
老後の資産を用意したいなど、新NISAを活用してお金の不安解消へと近づきましょう。
この記事でわかること
- 新NISAは初心者でも始められる投資
- 新NISAは非課税期間が無期限である
- 新NISAは長期的かつ、無理のない投資ができる
新NISAを活用したい、少しでも資産形成に興味がある人は、ぜひ最後までお読みください。
記事監修者
氏名 | 高橋豊治 |
大学 | 中央大学 |
学部 / 学科 | 商学部・金融学科 |
役職 | 教授 |
略歴 | 広島県福山市生まれ。広島県立福山誠之館高等学校卒業後、横浜市立大学商学部卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、一橋大学大学院商学研究科博士課程単位修得。1987年12月文部省大学設置審議会判定 千葉経済大学経済学部 専任講師、シグマベイスキャピタル取締役研究開発部長、高千穂大学教授 などを経て、2002年4月より中央大学商学部教授(現在に至る)。この間、日本金融学会理事、生活経済学会理事、オーストラリア国立大学客員研究員、ロンドン大学客員研究員、中央大学学生部長、中央大学副学長なども歴任。主な専門は、証券投資論、金融工学 など |
新NISAは2024年から始まった少額投資非課税制度
新NISAは2024年1月に始まった、金融庁が主導している投資制度です。
旧NISA制度は2014年にスタートしており、より家計の安定的な資産形成を進めるために、新NISAが始まりました。
通常、投資で得た売却益や配当金などの利益には、20.315%の税金が課されます。
しかしNISA口座を活用した場合は、一定額までは利益に対して非課税となります。
少額投資でも利益に対して課税されないため、初心者でも始められる投資方法です。
新NISAと旧NISAでは投資できる額や保有期間が違う
今回できた新NISAと旧NISAでは、どのような点が違うのかわからない人もいるでしょう。
はじめに旧NISAに関する詳細を、以下でご紹介します。
一般NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | |
---|---|---|---|
非課税保有期間 | 5年間 | 20年間 | 5年間※1 |
年間非課税枠 | 120万円 | 40万円 | 80万円 |
投資可能商品 | 上場株式/ETF/公募株式投信/REIT等 | 長期積立/分散投資に適した一定の投資信(金融庁への届出が必要) | 一般NISAと同じ |
買付方法 | 通常の買付け/積立投資 | 積立投資(累積投資契約に基づく買付け)のみ | 一般NISAと同じ |
払い出し制限 | なし | なし | あり(18歳まで) |
旧NISAでは一般NISAとつみたてNISAの併用はできず、どちらか片方のみで運用ができる仕組みです。
ジュニアNISAは20歳未満の子供を対象としており、子供の教育資金形成などを目的として利用されています。
新NISAでは、以下のような形に変更されます。
成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
---|---|---|
年間投資枠 | 240万円 | 120万円 |
非課税保有期間 | 無期限化 | 無期限化 |
非課税保有限度額(総枠) | 1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで) | 1,800万円 |
口座開設期間 | 恒久化 | 恒久化 |
投資対象商品 | 上場株式/投資信託等 | 長期積立/分散投資に適した一定の投資信 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
旧NISAとの関係 | 2023年末までに旧NISAにおいて投資した商品は、新しい制度の外枠で旧NISAにおける非課税措置を適用 | 2023年末までに旧NISAにおいて投資した商品は、新しい制度の外枠で旧NISAにおける非課税措置を適用 |
旧NISAとの大きな違いは、2つの投資枠が併用可能な点です。
成長投資枠とつみたて投資枠を併用し、最大で1,800万円までは非課税保有ができます。
恒久的な制度となった点や、ジュニアNISAは2023年末で制度が終了した点も変更された点です。
旧NISAの口座開設は2023年末にて終了しており、2024年1月からは新NISAのみ口座開設ができます。
成長投資枠とつみたて投資枠の違い
成長投資枠とつみたて投資枠は、上記の表で紹介したように、年間投資枠や購入可能な商品が異なります。
成長投資枠で購入できる商品は、旧NISAの一般投資枠とは大きく変わりません。
成長投資枠で購入できる商品は、具体的に以下のようなものがあります。
- 投資信託
- 国内株式
- 外国株式
国内ETFや国内ETN、REITのほか海外ETFも含んでいます。
つみたて投資と比較して、より積極的な投資を望む場合は、成長投資枠を活用しましょう。
新NISAの利点は柔軟な投資ができるなどの3つ
新NISAには旧NISAよりも柔軟な投資が可能となるなど、3つの利点があります。
新NISAを活用するか悩んでいる方、自分の目的と合っているのかどうかなど、利点と自身の希望が合っているか確認しましょう。
柔軟な投資ができる
新NISAの利点として、柔軟な投資ができる点があります。
旧NISAでは一般NISAとつみたてNISAの併用ができず、どちらかのみでの運用でした。
今回の制度変更により新NISAでは、成長投資枠とつみたて投資枠の併用ができるようになりました。
つまりコツコツと投資を続けつつ、積極的な投資も同時に行えるということです。
非課税保有枠も1,800万円まで増えているため、それぞれの運用方針に応じた使い分けができるでしょう。
ふたつの枠が併用できるほか、新NISAは非課税保有期間や口座開設期間が無期限化、恒久化されました。
旧NISAではそれぞれの非課税保有期間が決まっていたため、非課税保有期間が余っていてもったいないといった悩みを持った人もいるでしょう。
しかし、今後は期間についての悩みは発生しません。
自身のペースに応じて投資ができるため、旧NISAよりも柔軟な投資が行えるでしょう。
非課税保有限度額の再利用ができる
旧NISAでは保有資産を売却しても、非課税枠の再利用はできませんでした。
新NISAでは保有資産を売却した場合、買付金額分である商品取得価額分が、売却した翌年に復活します。
例えば年間上限額の360万円を毎年使い切ると、5年で生涯非課税限度額に届きます。
仮に買付商品に値動きがなく、1,800万円のままだった場合に200万円を売却するとしましょう。
5年目までに200万円を売却すると、翌年以降には200万円分の空きが出るため、6年目以降も最大200万円の投資が可能です。
旧NISAでは実質的な上限額が決まっていた点や、売却をしても上限額が増えなかった点などが悩みとなっていました。
そのほか、含み損のうちには売りたくないなどの悩みを抱えたまま投資を続ける必要がなくなり、より本質的な判断で資産の入れ替えができます。
長期的な資産形成に向いている
NISAの制度は旧NISAも新NISAも、どちらも少額での投資ができます。
利用する会社によっては、月100円からの投資も可能です。
自身や家族の生活に応じて、毎月の投資額を変更できるため、長期的に継続した投資ができるようになるでしょう。
新NISAでは非課税保有期間の無期限化、投資可能期間が恒久化しているため、より長期的な運用に取り組める仕組みです。
長期運用ではリスク分散のほか、複利の効果も得られる可能性があります。
老後に向けての資産形成を考えている人に、新NISAは向いているのです。
新NISAの欠点は旧NISAには無い除外条件が設けられている
新NISAには利点もあれば、欠点も存在します。
旧NISAと比較した場合や、新NISAが設けられたために起きた問題点などもあります。
今回は主に3つの欠点をご紹介するため、ぜひ始める前にご確認ください。
除外条件が設けられた
新NISAでは旧NISAにはなかった、除外条件が設けられました。
除外条件は長期保有による継続的な資産形成をサポートするという観点から、成長投資枠に設定されています。
新NISAの成長投資枠で購入できないのは、主に以下の4つの商品です。
- 整理銘柄や監理銘柄
- 信託期間20年未満の投資信託等
- 毎月分配型の投資信託等
- デリバティブ取引を用いた一定の投資信託等
整理銘柄とは、上場廃止が決まっている企業の株式のことを指します。
上場廃止基準に該当した場合、通常は1ヶ月ほどの期間を設けて、売買取引ができるようにした後に上場廃止となります。
監理銘柄は上場廃止の基準に該当する可能性がある場合に、証券取引所より指定される銘柄です。
どちらも、商品の長期保有によって資産形成を目指す新NISAには不向きである、と判断され除外されています。
毎月分配型や信託期間が20年未満の商品については、旧つみたてNISAで対象外だった点もあり、今回の成長投資枠でも除外となりました。
以前は購入できたが、今回購入できなかったとなる場合があるため、購入前に除外条件についてしっかり確認しましょう。
旧NISAから新NISAへの移管ができない
新NISAの欠点として旧NISAから、移管(ロールオーバー)できない点があります。
旧NISAでは非課税期間終了後に、翌年の非課税投資枠に移管し、非課税期間を更新できました。
しかし、新NISAでは非課税期間が無期限化したため、非課税期間終了後の移管という考え方がありません。
なお、新NISAは旧NISAとは別枠とされているため、旧NISAで運用している資産を新NISAへ移管させる行為も対象外です。
旧NISAで運用している資産を新NISAに移したい場合は、一度資産を売却して現金化した後に、新NISAで新たに購入する必要があります。
ただし、旧NISAと新NISAでは購入できる商品が異なる場合もあるため、事前に同じ商品の運用が可能か確認しましょう。
移管できない旧NISAはそのまま運用する
旧NISAで購入した商品は、新NISAへ移管できません。
そのため、現在運用している旧NISAをどのようにすべきか、悩んでいる人もいるでしょう。
先述しているとおり、新NISAと旧NISAは別枠となっているため、非課税保有枠をそれぞれ最大まで活用可能です。
旧NISAの運用によって、新NISAへの影響はないため、それぞれを切り分けて運用できます。
旧NISAでの運用を行っており、非課税運用期間に余裕がある場合は、慌てずに非課税期間終了までの保有が良いでしょう。
損益通算や繰越控除がない
損益通算とは1年分の利益と損失を相殺して、税金を減らす手段のことを指します。
上場株式などの投資によって出た利益には、20.315%の税金が発生しますが、他の取引で発生した損失との相殺が可能です。
NISAでは利益確定時の税金が発生していないため、損益通算の対象とはなりません。この点は旧NISAも新NISAも同じです。
繰越控除は損益通算で引ききれなかった損失を、最大3年間繰り越して利益を差し引くものを指します。
NISAでは損益通算の対象外となるため、同時に繰越控除も対象外です。
18歳以下は新NISAの利用ができない
旧NISAの一般NISAやつみたてNISAは、18歳以上の成人のみが利用できる制度です。
しかし、旧NISAには18歳未満でも利用できる、ジュニアNISAが用意されていました。
新NISAではジュニアNISAは引き継がれておらず、18歳未満が利用できる制度はありません。
これまで子供の教育資金の形成などに利用できていた制度がなくなったため、今までジュニアNISAを利用していた人には不便でしょう。
今後子供のための資金形成には、NISA以外の方法を検討する必要があります。
新NISAは初心者でも始められる投資
投資に興味はあるけれど、投資経験のない人でもできるのか不安な人は多いでしょう。
その観点から見ると、新NISAは初心者でも始められる投資といえます。
特につみたて投資枠では、毎月定額を投資に回し、長期間の投資によって利益を獲得する仕組みです。
投資に必要な金額は決まっておらず、無理のない範囲で投資に挑戦できます。
用意されている商品も、一定の基準を満たしたもののみであるため、危険性の高い商品はほとんどありません。
専門的で高度な知識も特に必要とされないため、放置していても問題ない点も初心者向けの理由です。
ただし、新NISAで始まる成長投資枠については、初心者向けとはいい切れません。
成長投資枠はつみたて投資では買えない商品の購入ができるほか、年間の非課税投資額も多く設けられています。
そのため、つみたて投資よりも積極的な投資が行えます。
ほかにも、非課税保有枠の再利用が可能な点から、売買の時期を見て損益を確定させる動きも発生するでしょう。
どの時期に売却をするのか売却後の投資先の判断など、自分で判断をするべき場面が訪れます。
判断には投資の経験や知識が必要となるため、初心者には難しいといえます。
まずは、つみたて投資枠で経験や商品に対する知識を深め、その後成長投資枠へ挑戦するといった形を検討しましょう。
新NISAはコツコツと老後資金を貯めたい人に向いている
新NISAはこれまでご紹介している通り、つみたて投資枠を活用してコツコツと投資を行う人に向いています。
そのほか、長期的に資産形成を進めたい、投資初心者にも向いている商品です。
無理のない範囲で、将来に備えておきたい人は、利用を検討しましょう。
反対に、短期間で大きな金額を運用したい人や、対象外の商品を運用したい人には向いていません。
非課税保有限度額の1,800万円を超える運用を希望する場合は、別の投資方法を取り入れましょう。
新NISAを活用するために気をつけたい3点
新NISAで失敗したとならないように、経験者も初心者も知っておきたい点があります。
今回は新NISAを始める際はもちろん、運用を続けるうえでも大切になります。
定期的に確認して、問題なく運用を続けられるか判断しましょう。
無理のない投資を行う
新NISAのみではなく、投資全体に当てはまる内容ですが、無理のある投資は禁物です。
単純に投資によって資産を増やそうと、生活費にまで影響を与えては意味がありません。
あくまで投資は生活を豊かにするための手段であると、捉えておきましょう。
旧NISAは期間限定の制度であったため、非課税枠を最大限活用するには、満額投資が重要でした。
しかし、制度が恒久化されている新NISAでは、必ず年間投資枠の満額を入れる必要はありません。
毎月5万円の投資でも、非課税保有限度額の1,800万円には、30年で到達します。
NISAは毎月の投資額に最低額が決まっているわけでもないため、生活を優先した投資が可能です。
無理のない範囲で少しずつ、将来のための資金形成を行いましょう。
希望の運用方法に応じて枠を使い分ける
新NISAには少しずつ無理なく投資のできるつみたて投資枠と、積極的な投資ができる成長投資枠の2つがあります。
併用もできるため、自身がどのように資産形成を行いたいかによって使い分けが可能です。
たとえば、その時に応じて無理なく投資をする場合は、つみたて投資枠を中心に月3万円といった方法を検討しましょう。
子育てが落ち着くまでなど期限を決めておき、その後投資額を増やすなど方法を変えられます。
反対に余裕がある場合や投資に力を入れたい場合は、成長投資枠も活用して月10万円を投資に回すなども可能です。
生活や状況などを含めて、自身の希望に応じて枠や費用を使い分けていきましょう。
投資目的は事前に決める
投資を始める前には、自身がなぜどのような目的で投資をするのかを、事前に決めましょう。
新NISAを活用して、老後の資金形成を目標としている人が多い傾向です。
老後資産をつくるためには日々の生活はもちろん、結婚費用や教育資金などを取り崩した運用を検討している人もいるでしょう。
しかし、投資自体に目を向けすぎて、生活に影響が出てしまっては意味がありません。
どうして資金形成が必要なのか、いつまでにいくら必要なのか、投資の目的をはっきりさせる必要があります。
退職金が期待できないため3,000万円を用意したい、会社の退職金制度が充実しているので1,000万円用意するなど、目標を設定しましょう。
金額によって投資に回すべき金額や、活用の仕方も変わります。
目的や目標は事前に決めるのはもちろん、都度現在の状況に応じて見直しを行い、無理のないペースで活用しましょう。
新NISAへの申し込み方法
新NISAを始めるには、銀行や証券会社で証券総合取引口座と、NISA専用の口座開設を行う必要があります。
NISAを扱っている銀行や証券会社は多いため、自身が気になる会社から申し込みましょう。
証券会社から申し込む場合は、Webから口座開設をできます。
例えば、楽天証券で初めて口座を開設する場合は、以下の流れになります。
- 楽天証券にて本人情報や確認書類など登録
- 総合取引口座を開設する
- 楽天証券にログインしてNISA口座を申し込む
- 受付完了メールとお知らせを受け取る
- NISA口座での取引開始
NISA口座が開設された後は、自身で好きな商品を選択し、毎月の投資額を決定するのみです。
設定をするとクレジットカードや口座から、決まった金額が投資へ利用されます。
最初の設定以外は特に手間がかからないため、ほったらかし状態でも問題ありません。
すでにNISAを活用している人は特に手続きは必要なく、利用していた金融機関で新NISA用の口座が開設されます。
NISA口座を開設できるのは一人1口座までです。もし、ほかの金融機関での運用を希望する場合は、乗り換えを希望している人向けの窓口から申し込みましょう。
新NISAを活用して将来への資産形成を始めよう
新NISAは2024年1月から始まった制度です。
旧NISAにはなかった成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能となり、口座開設期間の恒久化、非課税保有期間の無期限化などの変更点があります。
旧NISAでは一般NISAとつみたてNISAの2つに分かれ、併用はできませんでした。
新NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠となっており、両方を併用しての投資が可能です。
新NISAでは自身で投資額を決定できる点や、非課税保有枠を再利用できるなど、柔軟性の高い投資ができます。
非課税保有期間に期限がない点や、非課税保有限度額が1,800万円となっており、長期的な投資にも向いている制度です。
ただし、除外条件が設けられている点や旧NISAから新NISAへの移管ができない、損益控除などができないなどの欠点もあります。
自身が希望する投資の形であるか、投資を進めて問題がないかどうか、確認したうえで始めましょう。
投資を活用する際には、自身の投資目標の設定や希望に応じた無理のない方法を探す必要があります。
日常生活に影響がない金額はいくらか、将来的にいくら必要になるのか、目標を明確にしましょう。
新NISAは投資初心者でも始められる投資であり、長期的な資産形成に向いている制度です。
少しでも将来のための資産形成を考えている人は、ぜひ新NISAの利用をご検討ください。
高橋 豊治
銀行にNISA口座を開設しても、成長投資枠の株式投資を利用できないこと